カタとやわとの間には
「バリカタ」なんて粋な言葉をいつから使うようになったんだろう。
僕の故郷の和歌山もわりとラーメンが有名だけど、麺の硬さは店によってマチマチなように思う。
僕の祖母は実家の近くでラーメン屋を営んでいて(残念ながら今はないんだけど)、鍵っ子だった小学生の僕はたまに祖母の店で時間を潰していた。店には県外からツーリング途中のおじさんたちが大勢来ることがあって、彼らはよく「麺カタめで!」なんて威勢よく注文していたもんだから、おじさんになると硬い麺が好きになるのか、と不思議に思っていた。
今日も仕事で疲れた帰り道、無性にラーメンが食べたくなって会社の近くの博多ラーメンの店に入った。
今では僕もすっかりおじさんの仲間入りを果たしたからだろうか、「バリカタで!」なんて言葉が自然に出るようになったし、なんなら「替玉」なんて魅惑の炭水化物倍増システムも甘んじて享受するようになってしまった。
もくもくと麺をすすっていると、僕より少し後に入店した客が店主に告げた。
「ラーメン、やわで」
「カタ」があるなら「やわ」もある。そんな当然のことに僕は感心してしまった。
博多ラーメン屋においては「カタ」より「やわ」の方がツウっぽいんじゃないかとさえ思えた。
麺の硬さを示す言葉に「ハリガネ」なんてのもあるけど、対義語はなんなんだろうか。
「ゴムホース」とか?でもゴムホースは意外と硬いか。そもそも不味そうだし。
なんてくだらないことを考えながら、曇ったメガネもそのままに、20時の閉店時間に追われるようにそそくさと店を後にした。