まともがわからない

虚実半々くらい

Only In Dreams

子供の頃に好きだった女の子が夢に出てきた。

正直、顔は全く覚えておらず、夢の中の表情もピンぼけしているのだが、何故だかはっきりとその女の子であると認識できる。 夢の内容を滑々と語らう程野暮ではないが、中学、高校、大学のクラスメイトが十把一絡げに混在しているにもかかわらず、特に違和感なく受け入れているという、夢裡にはよくあるあの世界に僕は迷い込んでいた。 (学説的にこの現象に名前はないのかと色々調べてみたが、それらしいものが見つからなかったので詳しい人がいたらご教示願いたい。ちなみに僕は「同窓現象」と名付けた。)

 

僕はあまり熱心にSNSを活用してはいないのだけれど、三年に一度くらいフェイスブックを覗いてみることがある。特に、中学時代や高校時代などを共に過ごした友人と一緒に見るのが楽しい。意外なところが知り合っていたり、結婚していたり、破局していたりと、学生時代の後日譚をみているようで結構盛り上がる。

興味本位で夢に現れたあの子も探してみたが、それらしいアカウントは見つからなかった。

 

フィッツジェラルドの短編に「冬の夢」という話がある。

 

主人公の男は、10代の頃、ある富豪の家の少女に恋をする。

身分の違う美しい少女への淡い恋心。 やがて彼は事業に成功して一財を成し、彼女と付き合うようになるが、奔放な彼女に苦悩し、別れを選ぶ。その後、別の女性との結婚が決まるも、再び現れた彼女の姿に決意が揺らぐ。 しかし、奔放な性格は変わっておらず、結局彼女は彼の前から姿を消す。 少ししてから、彼は仕事で出会った男から、彼女が別の男と結婚し、かつての輝きを失った月並みの主婦になってしまったことを聞かされ、涙を流す。

 

この話は、憧れの少女が平凡化してしまうことの悲しみ、みたいなことが主題だと思うんだけど、結局は主人公の男が少女を偶像化し、少年期からの恋を美談にして引きずっているだけで、エゴイズムでしかなく、女は男に最初から大した興味もないし、結婚生活も育児もそれなりに苦労しながら楽しくやっているんじゃないかというのが僕の感想だ。

いってみれば、崇拝していたアイドルが結婚して、育児に勤しみ、やがて離婚したニュースを知ってそれみたことかとあげつらうアイドルオタクの悲しみみたいなのが垣間見えるように思う。

 

何にせよ、知らぬが仏ということは世の中に結構ある。 夢に現れたあの子のアカウントが一生見つからないことを願うばかりである。

 

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